3.
「えっと…」
一人、戦いに慣れていない寵。
構えを取ろうにも、何処から襲ってくるか分からない相手への構えなど、取りようがない。
寵とて父を魔族に持ち、いちおう化け物退治もしたことくらいある。
が、邪鬼などの小物がほとんどで、大きな事件を担当したことなどなかったのだ。
「寵、下がってろよ」
「う、うん…」
碧に言われ、2〜3歩後ずさる寵。
一人何も出来ない自分が嫌だった。
けれど、前に出て、迷惑はもっとかけたくない…。
寵が立ち止まった直後、闇から、四方八方から、何かが飛んできた。
「なっ」
「うわっ」
「ちっ…」
それは細長い刃物のようだったが、黒くて暗くてはっきりとした形が見えない。
それも何処から飛んでくるのか、さっぱり分からないのだ。
「蛍明、蓮! 炎出して!」
「言われなくても…」
ぼっと姉妹の手に炎が宿る。
しかし、妖力を制御した状態では、そんなに大きな火にはならないし、元々二人の操るのは、黒炎。
闇を照らすほどの明るさは確保出来ない。
それだけでなく、制御装置を付けたままでは、炎を出している間、ほとんどこちら側から攻撃が出来ないのだ。
「碧も狐火出せ!」
「妖化しないと無理なんだよ! 制御装置付けたままじゃ、変化出来ない!」
姉妹の炎と、ほとんど五感でのみ、何とか襲ってくる黒を感じ取り、撃退する碧。
この姿で制御装置を付けていては、炎も植物も操ることは出来ないのだ。
「……装置、外すか?」
「それしか…」
「外せば、ガッコーふっとぶぞ」
「……」
蓮はどうということはないらしいが、碧と蛍明と寵はかなり困る。
ばれた日には、親から大目玉を食らうことは確実だし、何より大事な母校。
そして、寵としては姉の母校でもあるが故、余計に全壊は避けたいところであった(彼の兄と、碧の兄の母校でもあるが、二人はあまり怖くはない)。
霊丸の一発二発ですめばまだいい方……霊光弾など身体に直接ぶつけられては、一ヶ月は確実に入院することになる。
「(姉さん、不良っぽいけど、あれで学校好きなんだもんな〜。くー兄と遊んだ場所とか、いっぱい言ってたし…)」
多分、それがふっとべば、相手が実の弟であれ、容赦してくれるとは思えない。
あれこれ悩んでいた寵だが、
「いたっ!」
「! 碧!?」
暗闇だが、全く見えないわけではないし、声ははっきり聞こえてくる。
駆け寄り、やや強引に腕をつかみよせると、
「碧っ! 血〜!!」
「騒ぐな! かすり傷だ!」
確かにかすり傷程度ではあった。
例えれば、猫にひっかかれた程度だろう。
それでも、血はぽたっと滴った。
碧の手から、寵の手へと。
ぷち
寵の中で、何かが、キレた。
「あ、碧に…」
「寵?」
「碧に怪我させたなー!!」
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